歩けないほどの椎間板ヘルニア…原因はこれだ!症状と改善策を詳しく紹介

「椎間板ヘルニアで歩けない…!」想像するだけで恐ろしいですよね。この記事では、歩行困難になるほどの重度の椎間板ヘルニアの原因、症状、改善策、予防法までを網羅的に解説します。椎間板ヘルニアは腰痛の原因として有名ですが、悪化すると歩行困難や排尿・排便障害などの深刻な症状を引き起こす可能性があります。原因は加齢や激しい運動だけでなく、デスクワークや遺伝、肥満、喫煙なども関係しているのです。この記事を読むことで、なぜ歩けないほどの痛みやしびれが生じるのか、そのメカニズムを理解し、具体的な症状や適切な対処法を学ぶことができます。保存療法や手術療法といった改善策、日常生活での注意点、そして何科を受診すべきかまで詳しく説明しているので、不安を解消し、適切な行動につなげることが可能です。椎間板ヘルニアの知識を深め、健康な生活を取り戻すための一歩を踏み出しましょう。

1. 歩けないほどの椎間板ヘルニアとは?

椎間板ヘルニアは、背骨の間にある椎間板が変形したり、飛び出したりすることで、周囲の神経を圧迫し、痛みやしびれなどの症状を引き起こす病気です。通常は、腰や首に発生することが多く、症状の程度は軽度から重度まで様々です。

「歩けないほどの椎間板ヘルニア」とは、椎間板ヘルニアの症状が重症化し、激しい痛みやしびれによって歩行が困難になっている状態を指します。日常生活に大きな支障をきたす深刻な状態であり、緊急の医療 intervention を必要とするケースも少なくありません。排尿・排便障害を伴う場合もあり、早急な対応が求められます。

1.1 重症度が高い椎間板ヘルニアの症状

重症度の高い椎間板ヘルニアでは、立ったり歩いたりすることが困難になるほどの激しい腰痛や足の痛み・しびれが生じます。安静時にも痛みが続くこともあり、日常生活に大きな支障をきたします。症状が悪化すると、下肢の麻痺や膀胱直腸障害(排尿・排便困難)などの重篤な症状が現れる場合もあります。

1.1.1 歩行困難になるメカニズム

椎間板ヘルニアによって神経根が圧迫されると、その神経が支配する筋肉に力が入りにくくなり、歩行が困難になります。特に、腰椎椎間板ヘルニアの場合、坐骨神経が圧迫されることで、下肢の痛みやしびれ、筋力低下が生じ、歩行に支障をきたします。また、痛みによって特定の姿勢をとることができなくなることも、歩行困難につながる要因となります。

神経根の圧迫部位 影響を受ける筋肉 歩行への影響
L4 大腿四頭筋(太ももの前の筋肉) 膝の伸展が弱くなり、階段の上り下りや立ち上がり動作が困難になる
L5 前脛骨筋(すねの外側の筋肉) つま先を上げるのが難しくなり、つまずきやすくなる
S1 下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉) つま先立ちが難しくなり、歩行時に足が地面に引っ掛かりやすくなる

1.1.2 排尿・排便障害の危険性

馬尾神経と呼ばれる神経の束が圧迫されると、排尿・排便障害が起こることがあります。これは、膀胱や直腸の機能をコントロールする神経が影響を受けるためです。症状としては、尿が出にくい、尿漏れ、便秘、便失禁などが挙げられます。馬尾症候群は緊急手術が必要な重篤な状態であるため、これらの症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。放置すると後遺症が残る可能性もあるため、早期の診断と治療が重要です。

2. 椎間板ヘルニアで歩けないほどの痛みになる原因

椎間板ヘルニアで歩けないほどの激痛が生じる原因は、一つではなく複数の要因が複雑に絡み合っている場合が多くあります。ここでは主な原因を詳しく解説します。

2.1 加齢による椎間板の変性

加齢とともに椎間板は水分を失い、弾力性が低下します。この変性によって椎間板がもろくなり、亀裂が生じやすくなることで、中の髄核が飛び出しやすくなり、神経を圧迫しやすくなります。特に、40代以降は椎間板の変性が顕著になるため、椎間板ヘルニアのリスクが高まります。

2.2 激しい運動や重労働

重量挙げや激しいスポーツ、重労働など、腰に大きな負担がかかる動作を繰り返すことで椎間板に圧力がかかり、損傷しやすくなります。特に、物を持ち上げる際に腰をひねる動作は椎間板ヘルニアのリスクを高めます。また、スポーツ選手や肉体労働者などは、椎間板ヘルニアを発症するリスクが高いと言われています。

2.3 長時間のデスクワークや不良姿勢

デスクワークやスマートフォンの長時間使用など、同じ姿勢を長時間続けると、腰への負担が増大し、椎間板ヘルニアを引き起こす可能性があります。猫背や前かがみの姿勢は特に椎間板に負担をかけるため、注意が必要です。また、柔らかいソファに深く座る姿勢も腰に負担をかけます。

2.4 遺伝的要因

椎間板の形状や強度は遺伝的な影響を受ける場合もあります。家族に椎間板ヘルニアの患者がいる場合は、自身も発症するリスクが高まる可能性があります。遺伝的要因は予防することが難しいですが、他の要因をコントロールすることでリスクを軽減することが可能です。

2.5 肥満

過剰な体重は腰椎への負担を増大させ、椎間板ヘルニアのリスクを高めます。BMIが高いほど椎間板ヘルニアのリスクも高くなる傾向があります。体重管理は椎間板ヘルニアの予防だけでなく、発症後の症状緩和にも繋がります。

2.6 喫煙

喫煙は椎間板への血流を阻害し、椎間板の変性を促進すると言われています。ニコチンは椎間板の栄養供給を妨げ、修復機能を低下させるため、椎間板ヘルニアのリスクを高めるだけでなく、症状の悪化にも繋がります。禁煙は椎間板ヘルニアの予防と改善に効果的です。

2.7 交通事故などの外傷

交通事故や転倒、落下など、急激な外力が腰にかかることで椎間板が損傷し、ヘルニアを発症することがあります。特に、追突事故などではむち打ち症と同時に椎間板ヘルニアを発症するケースも少なくありません。シートベルトの着用や安全運転を心がけることが大切です。

原因 詳細 予防策
加齢 椎間板の水分減少、弾力性の低下 適度な運動、バランスの良い食事
激しい運動・重労働 腰への負担増加、椎間板損傷 正しいフォームでの運動、休憩を挟む
不良姿勢・長時間のデスクワーク 腰への負担増加 正しい姿勢の維持、ストレッチ
遺伝的要因 椎間板の形状や強度の遺伝 他の要因のコントロール
肥満 腰椎への負担増大 体重管理、バランスの良い食事
喫煙 椎間板への血流阻害、変性促進 禁煙
外傷 急激な外力による椎間板損傷 安全運転、事故予防

これらの要因が単独、あるいは複数組み合わさって椎間板ヘルニアを発症し、歩行困難なほどの激痛を引き起こすことがあります。自身の生活習慣を振り返り、リスク要因を把握することで、椎間板ヘルニアの予防に繋げることが重要です。

3. 椎間板ヘルニアで歩けない場合の症状

椎間板ヘルニアが悪化し、歩行が困難になる場合、激しい痛みやしびれだけでなく、様々な神経症状が現れる可能性があります。これらの症状を理解することで、適切な対処と早期の医療介入につなげることが重要です。

3.1 激痛と痺れ

椎間板ヘルニアによる神経圧迫は、激しい痛みやしびれを引き起こします。この痛みは、腰だけでなく、臀部、太もも、ふくらはぎ、足先など、坐骨神経の支配領域に沿って広がるのが特徴です。咳やくしゃみ、排便時など、腹圧がかかる動作で痛みが悪化することもあります。しびれは、針で刺されるような感覚や、皮膚の感覚が鈍くなる、あるいは全く感じなくなるなど、様々です。左右どちらかの足に出る場合が多く、両足に症状が出るケースもあります。

3.2 間欠性跛行

間欠性跛行とは、一定距離歩くと足に痛みやしびれが出て歩けなくなり、少し休むとまた歩けるようになる症状です。これは、脊柱管狭窄症でもみられる症状ですが、椎間板ヘルニアによる神経圧迫でも起こり得ます。前かがみの姿勢になると症状が軽減されるのが特徴です。腰を曲げると脊柱管が広がり、神経への圧迫が一時的に緩和されるためです。

3.3 麻痺

重症の場合、足に力が入らなくなり、麻痺が生じることがあります。つま先がうまく上がらない、スリッパが脱げやすい、歩行時に足を引きずるなどの症状が現れます。進行すると、完全に歩けなくなることもあります。また、足首や膝の腱反射が弱くなる、消失するといった神経学的所見も認められます。

3.4 排尿・排便障害

最も深刻な症状の一つが、排尿・排便障害です。尿が出にくい、尿が出ない、残尿感がある、便が出にくい、便秘になる、便失禁などの症状が現れる場合、馬尾症候群の可能性があります。これは、脊髄の神経が圧迫されることで起こる緊急性の高い状態で、直ちに医療機関を受診する必要があります。

症状 詳細
激痛 腰、臀部、脚に激しい痛みが走る
痺れ 脚にしびれや感覚異常が生じる
間欠性跛行 一定距離歩くと痛みやしびれで歩けなくなる
麻痺 足に力が入らなくなり、歩行困難になる
排尿障害 尿が出にくい、残尿感、尿失禁
排便障害 便秘、便失禁

これらの症状は、椎間板ヘルニアの重症度や神経圧迫の程度によって異なります。早期に適切な治療を開始することで、症状の悪化を防ぎ、日常生活への影響を最小限に抑えることが可能です。少しでも気になる症状がある場合は、我慢せずに医療機関を受診しましょう。

4. 椎間板ヘルニアの診断方法

椎間板ヘルニアの診断は、医療機関で行われます。医師は、患者の症状や病歴、身体診察、画像検査の結果を総合的に判断して診断を下します。早期発見・早期治療のためにも、少しでも違和感を感じたら早めに医療機関を受診することが大切です。

4.1 問診

問診では、現在の症状(痛みやしびれの程度、部位、持続時間など)、発症の時期、過去の病歴、仕事内容、生活習慣などについて詳しく聞かれます。いつから、どのような痛みやしびれがあるのか、どのような動作で痛みが強くなるのかなどを具体的に伝えることが重要です。また、排尿・排便に異常がないかどうかも確認されます。

4.2 神経学的検査

神経学的検査では、神経の機能に異常がないかを調べます。具体的には、以下の検査が行われます。

4.2.1 感覚検査

皮膚の感覚(触覚、痛覚、温度覚など)に異常がないかを調べます。綿棒や針などで軽く触れたり、温かいものや冷たいものを当てたりして、感覚の鈍化や過敏がないかをチェックします。

4.2.2 筋力検査

特定の筋肉の力が入りにくくなっていないかを調べます。医師の指示に従って手足を動かしたり、抵抗を加えられた際にどの程度力が入るかを確認します。筋力低下の程度によって、神経の損傷度合いを推測することができます。

4.2.3 反射検査

腱をハンマーなどで軽く叩き、反射の強さを確認します。反射が弱くなっていたり、亢進していたりする場合は、神経に異常がある可能性を示唆します。代表的な反射検査として、膝蓋腱反射やアキレス腱反射などがあります。

4.2.4 SLRテスト(下肢伸上げテスト)

仰向けに寝た状態で、医師が片脚をまっすぐ持ち上げます。坐骨神経痛がある場合、持ち上げた脚に痛みやしびれが生じます。このテストは、椎間板ヘルニアによって神経が圧迫されているかどうかを判断するのに役立ちます。

4.3 画像検査(MRI、CT、レントゲン)

画像検査は、椎間板の状態を視覚的に確認するために実施されます。主な画像検査は以下の通りです。

検査方法 特徴 メリット デメリット
MRI検査 磁気と電波を使って体の断面画像を撮影する検査。椎間板の状態を詳細に確認できる。 椎間板の突出や神経の圧迫状態を正確に把握できる。診断の精度が最も高い。 検査費用が高額。閉所恐怖症の人は検査が難しい場合がある。体内金属がある場合は検査できない場合もある。
CT検査 X線を使って体の断面画像を撮影する検査。骨の状態を詳しく確認できる。 MRI検査よりも検査時間が短い。費用も比較的安価。 MRI検査に比べて椎間板の状態の把握は劣る。被曝がある。
レントゲン検査 X線を使って骨の画像を撮影する検査。 費用が安価。検査時間が短い。 椎間板の状態は直接確認できない。骨の変形や狭窄などを確認するために用いられる。

これらの検査結果を総合的に判断して、椎間板ヘルニアの確定診断を行います。また、他の疾患の可能性(脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症、梨状筋症候群など)も考慮し、鑑別診断を行うことが重要です。

5. 歩けないほどの椎間板ヘルニアの改善策

椎間板ヘルニアで歩行困難になるほどの痛みやしびれがある場合、適切な治療が不可欠です。症状の程度や原因、患者の状態に合わせて、保存療法と手術療法を使い分けます。自己判断で治療法を選択せず、必ず専門医の診断を受けて適切な治療方針を決定してください。

5.1 保存療法

多くの場合、まずは保存療法が選択されます。保存療法は手術をせずに痛みや炎症を抑え、神経の圧迫を軽減することを目的とします。主な保存療法は以下の通りです。

5.1.1 薬物療法

痛みや炎症を抑える薬を服用します。主な薬には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:ロキソニン、ボルタレンなど)、神経障害性疼痛治療薬(リリカ、サインバルタなど)、ステロイド薬などがあります。薬の種類や服用量は医師の指示に従ってください。

5.1.2 理学療法

温熱療法、牽引療法、電気刺激療法など、物理的な刺激を用いて痛みを和らげ、血行を促進します。理学療法士の指導のもと、適切な方法で行うことが重要です。

5.1.3 運動療法

ストレッチや筋力トレーニングによって、背骨周りの筋肉を強化し、椎間板への負担を軽減します。痛みが強い場合は無理せず、医師や理学療法士の指導のもと、徐々に運動強度を上げていくようにしましょう。

5.1.4 コルセットの着用

コルセットを着用することで、腰部を安定させ、椎間板への負担を軽減します。コルセットの種類や着用時間は医師の指示に従い、長時間の着用は避けましょう。

保存療法の種類 効果 注意点
薬物療法 痛みや炎症を抑える 副作用に注意
理学療法 血行促進、疼痛緩和 専門家の指導を受ける
運動療法 筋力強化、負担軽減 痛みに合わせて行う
コルセットの着用 腰部安定、負担軽減 長時間の着用は避ける

5.2 手術療法

保存療法で効果が見られない場合や、神経麻痺などの重篤な症状がある場合は、手術療法が検討されます。主な手術療法は以下の通りです。

5.2.1 椎間板ヘルニア摘出手術

顕微鏡や内視鏡を用いて、ヘルニアになった椎間板の一部または全部を摘出します。代表的な術式には、ラブ法、MED法などがあります。術式は患者の状態やヘルニアの程度によって選択されます。

5.2.2 内視鏡手術

小さな切開部から内視鏡を挿入し、ヘルニアを摘出します。傷が小さく、体への負担が少ないのが特徴です。全ての症例に適応できるわけではありません。

5.2.3 人工椎間板置換術

損傷した椎間板を人工椎間板に置き換える手術です。比較的大がかりな手術であり、適応症例は限られます。

手術療法の種類 概要 メリット・デメリット
椎間板ヘルニア摘出手術(ラブ法、MED法) ヘルニアを摘出 効果が高いが、侵襲が大きい
内視鏡手術 小さな切開部からヘルニアを摘出 低侵襲だが、適応症例が限られる
人工椎間板置換術 損傷した椎間板を人工物に置換 機能回復が期待できるが、大がかりな手術

手術療法は、それぞれメリット・デメリットがあるため、医師とよく相談し、最適な治療法を選択することが重要です。

6. 椎間板ヘルニアを予防するために

椎間板ヘルニアは、一度発症すると日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。再発のリスクも高いため、予防策を理解し、日頃から実践することが重要です。適切な姿勢、適度な運動、バランスの良い食事、そして生活習慣の見直しなど、今日から始められる予防策を詳しく見ていきましょう。

6.1 正しい姿勢を保つ

不良姿勢は椎間板への負担を増大させ、ヘルニア発症のリスクを高めます。正しい姿勢を意識することで、椎間板への負担を軽減し、ヘルニアを予防することができます。具体的には、以下の点に注意しましょう。

6.1.1 立つ時

  • 背筋を伸ばし、あごを引く
  • お腹に軽く力を入れる
  • 体重を両足に均等にかける

6.1.2 座る時

  • 深く腰掛け、背もたれに寄りかかる
  • 足を組まない
  • デスクワーク時は、モニターの高さを目の位置に合わせる
  • 長時間同じ姿勢を続けない

6.1.3 物を持ち上げる時

  • 膝を曲げて、腰を落とす
  • 背中を丸めない
  • 重いものはできるだけ複数人で持ち上げる

6.2 適度な運動

適度な運動は、背骨周りの筋肉を強化し、椎間板への負担を軽減する効果があります。ウォーキング、水泳、ヨガなど、腰に負担の少ない運動を継続的に行うことが大切です。ただし、激しい運動や間違ったフォームでの運動は逆効果になる場合があるので注意が必要です。医師や理学療法士に相談しながら、自分に合った運動を見つけましょう。

おすすめの運動 効果 注意点
ウォーキング 全身の血行促進、筋力強化 正しい姿勢を意識する
水泳 浮力により腰への負担が少ない、全身運動 水温に注意
ヨガ 柔軟性向上、体幹強化 無理なポーズは避ける
ピラティス 体幹強化、姿勢改善 インストラクターの指導を受ける

6.3 バランスの取れた食事

骨や筋肉の健康維持には、バランスの取れた食事が不可欠です。カルシウム、ビタミンD、タンパク質などを積極的に摂取しましょう。また、肥満も椎間板ヘルニアのリスクを高めるため、適切なカロリー摂取を心がけ、適正体重を維持することが重要です。

6.4 禁煙

喫煙は、椎間板への血流を阻害し、変性を促進させる原因となります。椎間板ヘルニアの予防、そして健康全体のためにも、禁煙を強く推奨します。

6.5 体重管理

過剰な体重は椎間板への負担を増大させます。適正体重を維持するために、バランスの取れた食事と適度な運動を心がけましょう。BMI値を目安に、自身の体重を管理することが大切です。

7. 日常生活での注意点

椎間板ヘルニアの再発を防ぎ、症状を悪化させないためには、日常生活での注意が重要です。特に、歩行が困難なほどの重度の椎間板ヘルニアの場合は、日常生活における動作一つ一つが症状に大きく影響します。ここでは、日常生活で特に注意すべき点について詳しく解説します。

7.1 重いものを持ち上げない

重いものを持ち上げる動作は、腰椎に大きな負担をかけます。椎間板への圧力を高め、ヘルニアの悪化や再発に繋がる可能性があります。日常生活では、できるだけ重いものを持ち上げないように心がけましょう。特に、中腰の姿勢で重いものを持ち上げるのは厳禁です。どうしても持ち上げる必要がある場合は、膝を曲げて腰を落とした姿勢で、背中をまっすぐ保ち、腕の力ではなく足の力を使って持ち上げるようにしましょう。また、荷物を持つ時は体に近づけて持ち上げることで、腰への負担を軽減できます。買い物カゴやキャリーバッグなどを活用するのも有効です。

7.2 長時間の同じ姿勢を避ける

長時間同じ姿勢を続けることは、腰への負担を増大させ、血行不良を招きます。特に、デスクワークや車の運転など、座りっぱなしの姿勢は椎間板ヘルニアの大敵です。1時間に1回程度は立ち上がって体を動かす、軽いストレッチをするなど、こまめな休憩を挟むように心がけましょう。また、座る際は正しい姿勢を意識することが重要です。深く腰掛け、背筋を伸ばし、足を床につけましょう。クッションや背もたれなどを活用して、腰をサポートすることも効果的です。立っている時も、片足に重心を乗せるなど偏った姿勢を避けて、均等に体重をかけるように意識しましょう。

7.3 適切な睡眠

睡眠中は、身体を休ませ、損傷した組織を修復する大切な時間です。椎間板ヘルニアの症状改善のためにも、質の高い睡眠を確保することが重要です。睡眠不足は、疲労を蓄積させ、痛みを悪化させる可能性があります。毎日同じ時間に寝起きし、規則正しい生活リズムを保つように心がけましょう。また、自分に合った寝具を選ぶことも重要です。硬すぎるマットレスは腰に負担がかかり、柔らかすぎるマットレスは体が沈み込み、正しい姿勢を保てません。適度な硬さのマットレスを選び、腰をしっかりとサポートしましょう。寝姿勢にも注意が必要です。仰向けで寝る場合は、膝の下にクッションを置いて軽く膝を曲げると、腰への負担を軽減できます。横向きで寝る場合は、抱き枕などを抱えると、体が安定しやすくなります。うつ伏せは腰を反らせるため、避けるべきです。

7.4 くしゃみや咳

7.4.1 くしゃみや咳をする時の注意点

くしゃみや咳は、腹圧を急激に上昇させ、椎間板に大きな負担をかけます。椎間板ヘルニアの症状がある場合は、くしゃみや咳をする際に腰を手で支える、壁にもたれかかるなど、腰への負担を軽減する工夫をしましょう。また、ティッシュペーパーやハンカチなどで口と鼻を覆い、腹圧の上昇を抑えることも有効です。

7.5 冷え対策

体が冷えると、血行が悪くなり、筋肉が緊張しやすくなります。腰周りの冷えは、椎間板ヘルニアの症状を悪化させる可能性があります。特に、冬場は、腰を温めるように心がけましょう。腹巻やカイロを使用したり、温かいお風呂に浸かったりするのも効果的です。夏場でも、冷房の効き過ぎた部屋では、羽織るものなどを用意して、体を冷やさないように注意しましょう。

7.6 トイレ

7.6.1 排便時の注意点

排便時に強くいきむと、腹圧が上昇し、椎間板への負担が増大します。便秘は避けるように、食物繊維や水分を十分に摂り、規則正しい排便習慣を身につけましょう。また、足台を使うことで、排便時の姿勢が改善され、腹圧の上昇を抑えることができます。

場面 注意点
入浴 熱いお風呂に長時間浸かるのは避け、ぬるめのお湯にゆっくりと浸かるようにしましょう。湯船から立ち上がる際は、急な動作を避け、ゆっくりと立ち上がりましょう。
着替え 床に置いてある衣服を拾う際は、膝を曲げて腰を落とすようにしましょう。椅子に座って着替えるのも有効です。
車の運転 長時間の運転は避け、こまめに休憩を取りましょう。運転中は正しい姿勢を保ち、腰をサポートするクッションなどを活用しましょう。
就寝時 寝返りを打つ際に腰に負担がかからないよう、スムーズに寝返りができるような寝具を選びましょう。

8. 病院は何科を受診すればいい?

椎間板ヘルニアの症状が出た場合、どの診療科を受診すれば良いのか迷う方もいるかもしれません。適切な診療科を受診することで、早期診断・治療につながります。主な受診先と、それぞれの医療機関の特徴を解説します。

8.1 整形外科

整形外科は、 musculoskeletal system(筋骨格系)の疾患を専門的に扱う診療科です。椎間板ヘルニアは脊椎の疾患であるため、まずは整形外科を受診するのが一般的です。整形外科では、問診、神経学的検査、画像検査(レントゲン、MRI、CTなど)を行い、診断を確定します。保存療法で効果が見られない場合や、症状が重い場合には、手術療法も検討されます。

8.2 脳神経外科

脳神経外科は、脳、脊髄、末梢神経系の疾患を扱う診療科です。椎間板ヘルニアが神経を圧迫している場合や、脊髄に影響が出ている場合は、脳神経外科での治療が適していることもあります。特に、馬尾症候群など、緊急性を要する症状が現れた場合は、脳神経外科を受診することが重要です。

8.3 ペインクリニック

ペインクリニックは、慢性的な痛みを専門的に扱う診療科です。保存療法で痛みが改善しない場合や、手術が適さない場合に、ペインクリニックでの治療が選択肢となります。神経ブロック注射や薬物療法など、痛みに特化した治療を提供しています。

8.4 脊椎外科

脊椎外科は、脊椎の疾患を専門に扱う診療科で、整形外科や脳神経外科の一分野として存在する場合もあります。高度な専門知識と技術を持つ医師が、脊椎の手術や治療を行います。複雑な椎間板ヘルニアや、他の脊椎疾患を合併している場合などは、脊椎外科での治療が適切な場合があります。

8.5 医療機関の選び方

どの医療機関を受診するかは、症状の程度や個々の状況によって異なります。まずは近くの整形外科を受診し、必要に応じて他の専門医療機関を紹介してもらうのが良いでしょう。

医療機関 特徴 こんな方におすすめ
整形外科 椎間板ヘルニアの一般的な治療を行う 初めて椎間板ヘルニアの症状が出た方、症状が軽度~中等度の方
脳神経外科 神経症状が強い場合や、緊急性を要する症状に対応 神経症状が強い方、馬尾症候群などの緊急症状がある方
ペインクリニック 慢性的な痛みに対する専門的な治療を提供 保存療法で痛みが改善しない方、手術が適さない方
脊椎外科 脊椎疾患の専門家による高度な治療を提供 複雑な椎間板ヘルニアの方、他の脊椎疾患を合併している方

セカンドオピニオンを求めることも有効です。複数の医師の意見を聞くことで、より適切な治療法を選択することができます。

また、医療機関のホームページや口コミサイトなどを参考に、設備や医師の専門性などを確認することも重要です。安心して治療を受けられる医療機関を選びましょう。

9. まとめ

歩けないほどの椎間板ヘルニアは、日常生活に深刻な支障をきたす重篤な状態です。その原因は、加齢による椎間板の変性、激しい運動や重労働、長時間のデスクワークや不良姿勢、遺伝的要因、肥満、喫煙、交通事故などの外傷など様々です。症状としては、激痛や痺れ、間欠性跛行、麻痺、排尿・排便障害などが挙げられます。特に排尿・排便障害は放置すると重篤な合併症を引き起こす可能性があるので、早急な医療機関への受診が必要です。

診断は、問診、神経学的検査、MRI、CT、レントゲンなどの画像検査で行われます。治療法は、保存療法と手術療法があり、症状の程度や患者の状態によって適切な方法が選択されます。保存療法には、薬物療法、理学療法、運動療法、コルセットの着用などがあります。手術療法には、椎間板ヘルニア摘出手術、内視鏡手術、人工椎間板置換術などがあります。症状が改善しない場合や、神経症状が悪化している場合は、手術が検討されます。

椎間板ヘルニアを予防するためには、正しい姿勢を保つ、適度な運動をする、バランスの取れた食事を摂る、禁煙する、体重管理をするなどの生活習慣の改善が重要です。また、重いものを持ち上げない、長時間の同じ姿勢を避ける、適切な睡眠をとるなど、日常生活での注意点を守ることも大切です。歩けないほどの痛みがある場合は、整形外科を受診しましょう。早期発見・早期治療が、日常生活への影響を最小限に抑える鍵となります。

初村筋整復院